介護士
介護職をしてるんですけど、移乗させたときに腰を痛めてしまいました。
何度も繰り返しているので、コルセットが手放せません。
早く仕事をしなければならない、転倒させないようにしないといけないなど、考えていると自分の体のことを忘れがちになりますからね。
自分の体も相手の体も大切にしながらできる移乗方法を教えます。
リハ君
・腰を痛めない移乗方法
・安全で相手の能力を伸ばす移乗方法
これを実践するだけで、腰の痛み、膝の痛みなどが大幅に軽減されます。
ぜひ試してみてください。
目次
移乗?トランスファーとは?
そもそもトランスファーとは?
トランスファーとは、「移動・乗り換え」という意味で、介護用語では「移乗動作」と言われています。
例えば、ベッドから車椅子への移動、車椅子から椅子への移動、床から車椅子への移動などのことを移乗動作(トランスファー)と言います。
トランスファーには大きく分けて、2つの方法があります。
それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
患者の能力を使わずに移乗するメリット・デメリット
患者の能力を使わずに移乗することは、要するに全介助で実施すること。
メリット
デメリット
患者の能力を使って移乗するメリット・デメリット
患者の動きを最大限に引き出して移乗すること。
メリット
デメリット
腰を痛めない移乗方法「7つの準備」
それでは、本題に入っていきます。
移乗介助で腰を痛めないための7つのポイント
①患者様の動作能力を把握
②手すりの位置
③ベッドの高さ
④車椅子の位置
⑤患者様への声かけ
⑥患者の座位ポジション
⑦患者の足の位置
簡単に言うと、移乗時に介助者・患者様が体を痛めてしまう最大の原因は、準備段階にあります。
この準備を怠ってしまうと、腰痛になるリスクが上がってしまいます。
※今回はベッドから車椅子への移乗を想定しています。
患者様の動作能力を把握
患者様の動作能力をがどの程度なのかを把握することで、介助量を最小限に抑えることができる。
例えば、立ち上がりは少し介助してあげて、立位保持は見守り、方向転換は接触介助でできるなど、患者様がどのくらい動けるのかを事前情報として知っておくとスムーズに介助することができます。
手すりの位置
手すりの位置は、その患者様にとって最も効果的な位置に設置しているのか?を検証する必要があります。
その位置さえ決めてしまえば、その後の介助はとても楽になる。
ベッドの高さ
ベッドの高さは最適か?
ベッドから車いすに移乗するのであれば、ベッドのほうが高く位置させることが重要。
逆に車いすからベッドに移乗するのであれば、ベッドの高さを低く位置させておく。
車椅子の位置
移乗先である車いすのポジショニングも重要。
患者様にとって左側に設置するのか?右側に設置したほうがいいのか?
車いすを設置する角度は?
一般的には、ベッドに対して30°~40°くらいの角度をつけるとスムーズに移乗することができます。
患者様への声かけ
患者様と意思疎通も重要。
理解をしているのかで介助量に大きな影響を及ぼします。
いきなり動かされては、恐怖心により体がこわばってしまうこともあるので、必ず声かけをしてから移乗を行いましょう。
患者の座位ポジション(深く座りすぎていないか)
起き上がって座位姿勢での注意は、浅く座りすぎていないか?また、深く座りすぎていないかをチェックしましょう。
浅く座っていると、転落の恐れがあります。
深く座りすぎていると、立ち上がりがスムーズに行えず、患者様も介助者もかなり大変です。
患者の足の位置(移乗先の足が前方にあるか)
立ち上がった後に、方向転換し着座までを行うのに、一方の足を先に出しておくとよりスムーズな移乗ができます。
必ず移乗する側の足を前方に出しておきましょう。
「移乗介助はもう嫌」自分の体を守る6つの対策
介助者は、1日で何度も移乗介助をする場面が多いと思います。
間違った移乗方法をしてしまうと、腰痛、膝痛、手首痛など負傷してしまいがち。
なので、できるだけ体に負担をかけないためのポイントを6つご紹介します。
①いきなり動かさない
②股関節、膝関節を曲げる
③足を揃えない
④手首はまっすぐで固定
⑤立ち位置
⑥患者の重心を前方に
それぞれ詳しくみていきましょう。
いきなり動かさない
まずは自分の体の準備が整っていないといけません。
なかなか時間が無いかもしれませんが、痛みが出ているときの仕事量は大きく低下し、他スタッフまで迷惑をかけてしまいます。
1分でもいいので、ストレッチをしてから移乗などを行ないましょう。
股関節、膝関節を曲げる
立ち上がりの介助、方向転換の介助をする際に腰から曲げるのではなく、股関節・膝関節を曲げて行なうように意識しましょう。
腰から曲げてしまうと、背骨や椎間板に大きな負担がかかってしまいます。
足を揃えない
介助者から見て左側に移乗をするのであれば、介助者は左足を後方へ引いておく。かつ、肩幅以上に広げておく。移乗動作がスムーズに行なえ、転倒のリスクも軽減できます。
足を揃えて移乗を行なってしまうと、自分が意図していない動きをされると無理な体勢になってしまい腰痛の原因になります。
手首はまっすぐで固定
腋窩介助で移乗を行なう際には、手首はできるだけ固定しましょう。
撓屈、尺屈の動きが出ると痛みの原因となります。
要するに、「前にならえ」の手首の形で固定するということ。
立ち位置
患者から離れすぎると介助者への負担は倍増し、近すぎても負担となり転倒のリスクも上がります。
どこに立つのがベストなのか、試してみるといいでしょう。
患者の重心を前方に
患者の股関節を曲げていくようなイメージで体を前方に引き出し、立ち上がりを行なうようにしましょう。
持ち上げる感覚ではなく、引くイメージで行なうことで「てこの原理」が働き、無駄な力を入れなくても立ち上がらせることができます。
【5ステップ】スムーズな移乗の流れ
次に、スムーズな移乗を行うための流れを解説します。
この5つの流れに沿ってみていきましょう。
①環境整備
「車椅子などの設置場所を決める」
起き上がりをした時にスムーズに移乗に移れる位置に設置する。
足が曲がらない患者の場合は、設置した車椅子に当たってしまうため、少し遠めに設置する。
「バルーン、点滴を起き上がる方に移動させる」
座位が安定していない患者の場合は、ルートの管理を先にしておく。
移乗し終わったときに始めの位置から動かさないことがベスト。
②起き上がり
「側臥位にする」
側臥位にすることで、患者と介助者の距離が近くなり、介助者にかかる負担が軽減されると同時に操作しやすくします。
また、患者が起き上がる動作の学習にもなる。
「足を先にベッドから下ろしておく」
起き上がりをする前に先に足をベッドから下ろしておくと、座位の位置がどこにくるかイメージしやすくなる。
また、起き上がり介助も軽減できます。
③立ち上がりの準備
「殿部の位置調整」
深く座りすぎてしまっていると立ち上がりがスムーズに行なえません。また、浅く座りすぎていると座位が安定しません。
イメージとしては股がベッドの端にくるところが理想。
「手すりの位置」
立ち上がりを行なう際から移乗につながる場所を持ってもらう。車椅子で言うと奥側のハンドレスト。
肩の可動域が無い場合は、手前のハンドレストを持ってもらい、立ち上がった後に奥側に持ち替えてもらう。
注意点としては、介助者を持たないようにしてもらうこと。
なぜなら介助依存になる可能性が高く、正しい動作の習得ができないから。
「足の位置を整える」
ステッピングが出る患者は問題ないが、移乗する際に足の位置が悪いと捻挫をしてしまうリスク、また皮膚剥離をしてしまうリスクがある。
必ず移乗する方の足を前方にしておく。
④立ち上がり
「立ち上がりをしてから方向転換」
殿部が浮いたらすぐに座ろうとしてしまう患者様が多い。
せっかく立ち上がる能力があるのに、立位をとらないのはもったいない。
筋力維持、動作学習にもなるので立ち上がりが軽介助くらいの患者であれば、しっかりと立位姿勢をとることが大切です。
※中介助~全介助の場合
体重が重い患者、膝折れしてしまう患者であれば、2人介助で行なうことを優先。
動作学習をさせたい患者であれば、なおさら2人介助で正しい動作で行える環境を作ることが大切です。
⑤方向転換から着座
「ステッピングが出るか」
立ち上がった後に方向転換できるかで介助量が大きく変わる。
できれば、足の向きを変えるようにと促すといい。
初めは介助量が多くなってしまうが、今後のことを考えると楽に移乗することができます。
介助で方向転換をさせる場合は、必ず足下を見ながら行なうようにしてください。捻挫や皮膚剥離が最も生じやすいシーンです。
「着座」
方向転換後、すぐに座らせるのではなく、しっかりと重心を前方にもっていきながら着座させる。
そうしないと、勢いよく座ってしまったり、動作の学習ができなかったりとデメリットが多い。
介助量が多い場合は、患者の膝と介助者の膝を接地させるとゆっくりと安全にできる。
【まとめ】腰痛を防ぐ移乗方法
移乗介助をスムーズに、負担をかけないようにするためには、準備が重要です。
この準備を欠いてしまうと、自分・相手の両者にストレスを与えてしまいます。
何度も言いますが、必ず「準備」をしてから移乗介助をしましょう。
今回紹介した項目をすべてこなそうと思っても、なかなか難しいと思うので、2~3つくらいは実践してみるといいでしょう。
慣れてきたら、徐々に増やしてみてください。